トンネルの向こう

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トンネルの向こう

 家の近くにトンネルがある。  古くて薄暗くて、いかにも何か出そうな風情だが、何か出たという話を聞いたことがない。  理由は簡単。そのトンネル、めちゃくちゃ短いんだ。  長さは二メートル程度。こちかららあちら側は丸見えで、トンネルである以上薄暗くはあるけれど、筒抜け状態だから怯える必要がまったくない。  そんな何もないトンネルだけど、かなり昔から地元の人間は誰もここを利用しない。  短くて向こうが筒抜けのトンネル。覗いた先には古ぼけた神社が見える。  そこの鳥居の真ん中に、いつも小さな女の子が座っていて、見るたび、おいでおいでと手招きをする。  でも、そこに神社はないんだ。  昔は小さな神社があったらしいけど、いつからかなくなって、今は荒れ地が広がるばかり。別ルートからトンネルの向こうに出れば、雑木だらけのその土地が確認できる。  でも、トンネルのこちらから覗くと、荒れ地の場所には神社があって、女の子が手招きをする。  トンネル自体には何もいない。でも、そこを抜けて向う側へ出た時、本当はない筈の神社が存在してないという保証はない、むろん女の子もだ。  だからこのトンネルを地元の人間は誰も通らない。  女の子の正体は何かって? トンネルを通って確かめに行った人がいないから…知らないよ。 トンネルの向こう…完
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