貸しボート

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 その翌日、仲間内の一人が湖の土産物屋でしか売っていない限定のお土産を買いたいと言い出し、特にスケジュールを詰めていた訳ではなかったから、全員でもう一度湖に向かった。でも昨日と違って湖周辺に人はおらず、貸しボート店は閉まっているようだった。  土産物屋は一応開いていたので、そこで人の少ない訳を尋ねてみたら、昨日、私達が帰った後、ボートの転覆騒ぎがあったという。  幸い乗っていた人はすぐ救助され、大事には至らなかったというが、念のため貸しボート店は今日一日休んで、総てのボートの点検が行われているらしい。  その話を聞いた時、私の脳裏にはあの、船底のないボートが浮かんだ。  転覆したのはもしやあのボートではないだろうか。いや多分、間違いなくあのボートが転覆したことだろう。  あの時点では、底が抜けて見えるなんて言っても誰も信じなかっただろうし、不幸中の幸いで、湖に落ちた人達もたいしたことはなかったらしいから、この話を口にするつもりはないけれど、転覆した人達には悪いけれど、あの時ゴネてよかったとは思っている。  でも、あのボートは何だったんだろう。今まで私のように底が抜けて見えた人や、今回のような転覆騒ぎはなかったんだろうか。それだけは今も気になっている。 貸しボート…完
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