モーニングコール

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モーニングコール

 出張でビジネスホテルに泊まったのだが、夜中に電話のベルに叩き起こされた。  止まないベルに苛立ちながらベッドを離れ、テーブルの片隅に設置された電話に手を伸ばす。 「おはようございます。お目覚めの時間です」  事務的な女性の口調に、俺はぐったりと肩を落とした。  起床のためにスマホのアラームをセットしてあるので、モーニングコールなど頼んではいない。  いったい何の間違いだと、すぐに電話を切ったが、ベッドに戻るよりも早くまた室内にベルが響いた。 「おはようございます。お目覚めの時間です」  さっきと同じ言葉が繰り返される。  俺はとっくに起こされてるし、そもそもモーニングコールなんて頼んだ覚えはねーよ!  そう怒鳴りたい気持ちを抑え、電話を叩き切った俺の耳に、ガチャリとドアノブが回る音が響いた。  きちんと閉めた筈のユニットバスの扉がゆっくりと動く。そして、ほんの少しだけ開いた扉の隙間から、ありえない声が溢れた。 「おはよう…」  部屋の鍵はむろん、チェーンだってかけている。誰かが室内に入り込んでいる筈がない。なのにユニットバスの内側から確かに声は響いた。  モーニングコールはいったい何を起こしたのか。  答えなんか知りたくないのに、ゆるゆると隙間が大きく開いていく。  外へ出る扉はその向こうだ。ドアを開けるだけならともかく、チェーンを外す余裕はない。  ベッドに潜り込んで寝たふりをしていれば、現れる『なにか』を見ずにすむだろうか。  そう思ったものの、足が竦んでベッドに戻ることすらできない。  室内とユニットバスを遮る扉がどんどん開いていく。それに対する最後の抵抗で、俺はきつく目を閉ざした…。 モーニングコール…完
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