昼下がりのホーム

『ただいま隣の駅におきまして、人身事故が発生しました』

　スピーカーから駅員のアナウンスが流れ、ホームの群衆が不機嫌そうにざわめいた。
　この後の運行が大幅に遅れるのは間違いない。
　ラッシュ時でないのが救いとはいえ、それでも少なからぬ数の利用者が本日の予定を乱され、多大な迷惑を被ることになるだろう。

　かくいう私もその１人だ。
　ため息をつくと、内ポケットから取り出したスマホで、１４時にアポを入れていた取引先の会社にお詫びの電話を入れた。

「また身投げかよ？　ったく迷惑だよなあ」
「何でわざわざ電車に飛び込むかな……死にたいなら、自分の家で勝手に死ねっての」

　そんな不満の声が周囲から漏れてくる。

　さすがに声には出さないものの、 私も同感だ。
　よりによって鉄道自殺などという手段を選ばなくてもよいだろうに……。

　うんざりした気分でスマホを操作し、スケジュール管理アプリを立ち上げる。
　これから先の予定も全て調整しなければならないからだ。