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Act.1
「パーティー…、の同伴に私をですか?」
疑心に満ちた声にも、男は表情一つ変えることなく「そうだ」と言った。
こうも言い切られてしまっては、聞き間違いで処理することは出来ない。
愛未(まなみ)は大きく見開いた目を揺らしながら、鼓動が速くなっていくのを感じた。驚きのあまり言葉が見つからず、浅い呼吸に唇の表面が乾いていく。
棒立ちのまま動けずにいる愛未を視界に入れた男は、チェアのアームに頬杖をついて足を組んだ。
仕立てのよいスラックスをスマートに履きこなす足は長く、凭れた背中をゆったりと受け止めるチェアは革張りで重厚感がある。
まるでどこぞの王様が座るようなチェアを従え、素人でも分かるほどの高級なスーツを身に纏う男は、滝川ホールディンググループの御曹司である。
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