01) 狐の初恋

19/41
479人が本棚に入れています
本棚に追加
/205ページ
華桜の言う『我が為』が自分のことなのか、華桜のことなのか……左近はちょっと考え、後者だなと結論付ける。 そして、本当、何処までもゴーイング・マイ・ウェイな人だなぁと妙な感心をする。 「それで? 先ほど口にしようとした質問は何だい?」 黙って話を聞いていた白夜が穏やかに訊ねる。 「――忘れたっす」 このタイミングで、『どうして白夜は人間ではなく猫なのか』と訊くのは、流石の左近も躊躇(ためら)われた。 『そんなの穴のせいではないか!』と華桜の雷が落ちるのがオチだし、何となくだが、今はまだそのことを聞くタイミングではない気がしたからだ。 その代わり左近は、「決めたっす、昼は衣笠丼(きぬがさどん)っす」と腕まくりをする。 「きつね丼のことか。それ、お主の大好物ではないか!」 華桜は呆れながらも、「まぁ、いい」と了承し、いつものように注意を促す。 「()げは甘辛く煮たのを使うのだぞ。いなり寿司に使うやつだぞ」 「当然です!」と左近が素直に頷くと華桜がさらに要求を増やす。
/205ページ

最初のコメントを投稿しよう!