“ま”の怪

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よう、と不意に肩を叩かれ、定期は改札に触れる事なく空を切った。 真壁か。 俺はみっつの意味で顔をしかめた。 “ま”に気をつけなさい。 今朝、家の最寄り駅で、深紅のローブの老いた占い師が、男女の判別しがたい嗄れた声色で俺に忠告した。 “ま”とはなんだ?   うつうつと考えたその答え。   真壁、まかべの“ま”。   同僚のおふざけと助言の的中、そしてあまりにふざけた結末が、俺の眉を不機嫌に額の中心に寄せさせた。 改札には、帰りに2度触れればいいだろう。   切符がなくともホームへ自由に行き来できるような田舎駅でも、通勤時間にはそれなりに混む。   人の波に逆らう気にもなれず、俺は押されるように外に出た。 「また出たってよ!無差別殺人!」と真壁。 厭なことに、その別の言い回しをすぐに思いついた。 まさか。いや、まさかな。
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