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中学生の冬。
学校から帰宅すると、宿題の用紙を忘れてきた事に気付き、取りに戻る事にした。
学校に着くと、夕暮れの中、まだ部活動で残っている生徒が沢山いた。
こんな機会は滅多にないので、普段行くこともない校舎の屋上に上がってみた。
屋上の柵越しから校庭を見下ろすと、部活動をしていた生徒達が片付けを始めているのが見えた。
その様をぼんやり眺めていると、ふと気配を感じた。
視線を横に向けると、少し離れた場所に両腕を組んで校庭を見下ろす、髪の長い女性がいた。
私服なのか学校の制服は着ておらず、全身が黒っぽい恰好だった。
しかし、あまり気にせず再び校庭に視線を戻した。
どれほど時間が経ったのか、いよいよ陽が沈み辺りが暗くなり始めた。
急いで校舎の三階にある自分の教室へと走った。
淡い照明が灯る薄暗い廊下を走り教室に着くと、廊下側の後方にある自分の机から宿題の用紙を取り出した。
そして、顔を上げた時。
薄暗い教室の窓際に人が立っている事に気付いた。
驚いたが、気を取り直して目を凝らすと、その人が誰なのか分かった。
黒い恰好で髪の長い、屋上で見かけた女性だった。
女性は屋上にいた時と同じ様に両腕を組んで、窓の外を見下ろしている。
どうしたのか尋ねてみたが、女性は答えず、ただ窓の外を見下ろしている。
もう一度、先程より大きな声で尋ねたが、やはり女性は反応しなかった。
何なのかと首を傾げながら、女性を残して廊下へと出た。
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