2人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ
「『ヨモダ君』のキャラデザを撤回して欲しい? どういうことですか!?」
応接室のテーブルを挟んで向かい合う野崎さんは、ただ申し訳なさそうに頭を下げた。
「あのコンテストへの応募は、最初からなかったことに……もちろん賞金は全額お返しします」
「急にそんなこと言われたって……」
僕はすっかり困惑し、手元のノートPCに映る2頭身キャラのイラストを見つめた。
町の観光課に勤める僕は、目下町おこしの一環として、ご当地キャラクターコンテストの企画を手がけている。
予想を上回る応募作品の中から選ばれたのは、町に住む30代の主婦・野崎さんの作品だった。
一言でいえば緑色の卵に丸っこい目鼻をつけ、お腹の辺りに黒い餡子をあしらっただけのシンプルなゆるキャラである。
だがその単純さと「4歳の娘が描いた空想のおともだち」という微笑ましいキャプションが審査員の共感を呼び、町の名産品であるよもぎ饅頭をイメージした「ヨモダ君」として採用されたのだ。
最初のコメントを投稿しよう!