月下のブランコ

2/5
3人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
 その晩、残業で遅くなった僕は駅から出る最終バスを逃してしまい、やむなくアパートまで歩いて帰ることにした。  徒歩なら40分以上の道のりである。  仕事の疲れもあり、途中の公園で自販機のジュースを買って小休止することにした。 (はあ。明日も早いのか……)  僕はベンチに腰掛け、缶ジュースを飲みながらボンヤリしていた。  青白い月の光が、公園内に設置されたいくつかの遊具を照らし出している。  やがてそのひとつに目が止まった。  鉄骨の下にゆりかご型のゴンドラをぶら下げた、いわゆる「箱ブランコ」と呼ばれるタイプだ。  ゴンドラの中に小柄な人影が座り、ゆっくりとブランコを揺らしていた。 (子ども……こんな時間に?)  ワンピースドレスを着た、5、6歳くらいの女の子だ。  周囲に保護者らしき大人の姿は見えなかった。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!