清算できなかった猫

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   呼吸が乱れているのか、泣いているのかわからない声が意識に届いた。  そういえばこの部屋には哲也がいたはず……とぼんやりした記憶がよみがえってきたころ、まさに彼は言い放った。 「俺のせいじゃない。俺は、悪くない!」  そんなセリフ、今までドラマや映画でしか聞いたことがない。  悪いことをしたのに、本当にそんな言い訳をする人間が現実にはいるのか……と思ったとき、散らばったものをかき集めて哲也があたしから離れた。  体中が痛くて、かすんだ視界で天井の汚れが見えるかと目を細める。  慌てて鍵を開け、哲也が部屋を出ていった。  まぶしいと思った瞬間、「きゃっ」とか細い声が廊下で響いた。  廊下で哲也がだれかと鉢合わせでもしたのかと思ったら、たった今明るくなった部屋に影が差す。 「……美弥?」  凍りついた声は──賢治郎のものだった。 .
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