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高校の同級生だった彼とFacebookで友達になったのは、単に彼から友達申請があったからだった。高校時代、特に親しかったわけでもないし、卒業してからは会ったこともないまま二十年以上経っていた。 彼のアカウントはしかしそれからほとんど活動している痕跡をみせず、友達一覧の中に名前を見る以外コメントはおろか、いいねの一つも見ないまま数年が経った。 彼の顔と名前を見たのは、思わぬところだった。新聞の三面記事で公金横領の公務員として顔写真入り実名で彼の姿を見たのだった。彼が市役所に勤めていたことも知らなかったので、その記事は私を戸惑わせるに十分だった。 高校時代の彼は目立たないおとなしい生徒で、まさか公金を横領して手が後ろにまわるようなことがあろうとは予想だにしなかった。無実の罪ではないかとも思ったが、事件そのものは借金と遊ぶ金欲しさだという動機も手口も平凡そのもので、疑う余地がありそうには見えなかったし、当人も罪を認めているという。 それからも彼のアカウントは残り続けた。相変わらず一度も更新されず、誰かが訪れている気配もなかった。
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