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待ち合わせの日は、夕方から雨になった。
約束の時間より早く着いた私は、傘をさしたまま暗くなっていく空を眺めていた。
これまでの出来事がすべて今につながっているのだとしたら、やっぱり偶然なんかじゃなかったのかもしれない。
私は、目を閉じる。
彼の訪れを、感じたかったから。
目を閉じて、その香りを待つ。
甘いムスクの香りが、訪れてくれるのを。そして優しい声が、語りかけてくれることを。
予感が届く。
新しい恋の、始まりの予感が……
私は、ただ彼が来るのを待っていた。
向かいの電気店に並んだテレビが、同じニュースを繰り返し流していることなど知りもせずに。
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