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レモン味
『ねぇ、レモンってしょっぱいよね。』
お母さんが出してくれたレモン味のアイスを食べながら晴香はいう。
「え?なに?」
聞き間違いかと思った。
「レモンってしょっぱいよね。」
レモンってしょっぱいよね。彼女は確かにそう言った。
「酸っぱいの間違いじゃない?」
不思議に思って尋ねるが、首を横に振る彼女。
「レモンは初恋の味だって、昔お母さんが言ってたんだ。私にとって初恋の味はしょっぱいの。」
初恋の味がしょっぱい?どうしてだろう。どんな初恋だったのだろうか。相手はどんな人か。疑問に思うことはたくさんあったし、聞きたいことは次から次へと浮かんできたが、初恋の味はしょっぱいと言った後の晴香の表情がどこか大人びていて寂しげて、何より瞳の色が全ての感情が抜き取られたような色をしていたから、私は何も聞かなかった。いや、聞くことが出来なかった。
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