僕と「私」と最期の夏

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 駅から出てくる  キミを見つけて  小走りに近寄った 『ねえ  何年ぶりかな』  その言葉は  喧騒にかき消されて  キミは答えを  くれなかったけど  それでもよかった  会えたことが  ただ嬉しくて  寄り添うように歩く  大人になった  キミの横顔は  前に会ったときより  ステキに見えるよ dd46f068-70f9-40d9-8037-14836f1f3167  前に来たときも  キミと二人だったね  覚えているかな  花火大会がメインの  地元のお祭りに  二人で浴衣を着て  遊びに来たよね  二人だってことが  すごく嬉しくて  いつも以上に  はしゃぐ私を  優しい瞳で  見てたキミを  今でも鮮明に  覚えているよ c25f3e38-1fb0-4f12-9c17-abe7f070c4f9  美しい花火の余韻に  浸りすぎたあの夏の  最期の時間……  二人を隔てたのは  アルコールに呑まれた 「誰か」の車  何が起きたのか  分からないまま  私の時間は  止まったんだ  ああ そうだよね  声が聞こえないのは  喧騒のせいじゃなくて  私が死んでいるから  キミに聞こえないんだ c22c117f-8e39-499d-aa47-fa663b74193a  あの日を  やり直すように  ゆっくりと  歩いてくれる  ねえどうして?  私はもう  ここにはいないのに  私の歩幅に  合わせてくれるの?  ねえどうして? 84fe3b5e-52ee-4e47-af67-d96b6d9d4a4f  打ち上がる花火  賑わう人の波  一人で花火を  見つめる  キミの隣で  私も一緒に  見つめている  前と違う状況  だけど  目に映る花火は  同じだね……  どんな思いで  キミはこの花火を  見ているのかな 8b0cd5a9-68d8-47b8-99ae-aa31bacb75d9  私は見てしまった  花火から  視線を外して  キミの横顔を  見つめたときに  静かに  流れ落ちる  涙の軌跡を  声も出さずに  ひっそりと  堪えるように  キミは泣いていた  笑顔あふれる  花火大会の会場で  ただ一人キミは  胸を痛めてるんだね
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