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桜の王子様Ⅱ
「先輩が、好きです」
屋上で可愛らしい女の子が言う。
俺に向かって。
頬を赤く染めて。
ときおり自信なさそうに俯いて、
だけど俺の反応を確認している。
ああ、すごく可愛いな。
できることなら受け入れたいな。
だけど・・・
「ありがとう。でも・・・ごめんなさい」
俺の一言が、彼女の表情を曇らせる。
「今は勉強とバイトに夢中で、誰かとお付き合いなんて考えられないんだ」
「・・・そうですか」
「本当にごめんね。すごく嬉しかったよ」
彼女の表情がさらに曇る。
でも、仕方がない。
彼女をつくる気がない、というのは事実なんだから。
「・・・ひとつ、いいですか?」
「ん、なにかな?」
「桑野紅とは、どういう関係ですか?」
紅ちゃんの名前を出されて、おもわずきょとんとしてしまった。
どうして紅ちゃんが出てくるんだろう。
「後輩だけど、それが何か?」
「よくあの子と一緒にいるのを見かけるので、もしかしたら二人は・・・」
「ああ、そういうことか。違うよ、全然」
確かに俺は、紅ちゃんに会うことが多くなった。
教室に行くたびに、女の子たちに注目されているのはわかっている。
でも、彼女が疑うような関係じゃない。
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