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今日もコンビニでお茶を買おうとする。するとそこに手がかかった。象牙のように白く細い指が視界に入る。 私は驚いて後ろを振り返った。 肩よりも長いストレートの黒髪、ちょっとつり目のはっきりした美人がそこにいた。 円城さんだった。 「あら、村上さん」 円城さんは艶やかに笑った。 「ごめんなさいね。あなたの方が先だったわね」 「いえ、いいんです」 恐れ多くて顔が上げられない。 結局、円城さんの提案で、買ったお茶を手に、近くの公園のベンチで話をすることになった。 「村上さんは、このキーホルダー集めてるの? たくさん持ってるけど……」 「ええっと、そう、ですね。そうなる、かな」 「あら、でも私が持ってる白のはないのね」 「そうなんです!白が欲しくていくつも買ってしまい……」 円城さんは軽く首を傾げた。 「白色が欲しいの?」 「はい!」 私は間髪おかずに返事をした。 円城さんはちょっと戸惑うように瞬きを数回した。そして。 「なら、この白、あげるわ。 その代わり村上さんがいくつか持っている黄色と緑をくれないかしら」 円城さんは悪戯を思いついたような顔で提案をしてきた。 「全然いいです! そうしてやってくだい!」 私は円城さんが持っていた白を譲り受けた。 円城さんがつけていたもの。それだけで幸せな気分になる。 そして、私があげた色の子たちは、円城さんとおそろいのものになった。 「ふふっ」 思わず笑んでしまった私に、 「そんなに欲しかったの?良かった」と円城さん。 「村上さんは可愛いものが好きなのね」 可愛いものは確かに好きだけど、大事なことは円城さんと関係するものかどうかということだ。 「今日は村上さんの一面を知れて良かったわ」 私も本当に良かった。私は新しく仲間になった白いキーホルダーを手で揺らして、現実であることを確認した。 「またお話ししましょうね」 「は、はい!」 私は帰っていく円城さんが見えなくなるまで見送った。途中、円城さんが振り返って、小さく手を振ってくれたのが嬉しかった。 私はもう一度白のキーホルダーを触って笑んだ。
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