5/14
370人が本棚に入れています
本棚に追加
/93ページ
 俺と白石は校舎の死角を頼りに歩き、時には走った。  校舎内が騒がしい。教師が、生徒が廊下を疾走している。  小塚達は無事だろうか……?  校舎に沿って、北へ向かう。  木々が囲うフェンスを前に、白石は立ち止まった。ここなら、木がフェンスを覆い隠してくれて、校舎からは見えない。 「のぼれるか?」 「ああ」  できないことはないだろうが、男二人が同時にのぼって、このフェンスは耐えられるんだろうな? 「先に行け」  白石にそくされ、頷く。  愚問、か。   鞄を白石に預け、俺は向こう側へと渡りきる。それを見届けて、ようやく、白石はフェンスに手をかけた。 「白石君」  透明感のある女の声。  白石が後ろを振り返る。  木々の影から那須さんが現れた。 「保!」  俺はフェンスを両手で掴んだ。  那須さんは気にとめず、白石を見つめ続ける。 「また、私を置いていくの?」  俺の体が不安でいっぱいになる。二人の共有しているものを、俺は知らない。
/93ページ

最初のコメントを投稿しよう!