370人が本棚に入れています
本棚に追加
/93ページ
俺と白石は校舎の死角を頼りに歩き、時には走った。
校舎内が騒がしい。教師が、生徒が廊下を疾走している。
小塚達は無事だろうか……?
校舎に沿って、北へ向かう。
木々が囲うフェンスを前に、白石は立ち止まった。ここなら、木がフェンスを覆い隠してくれて、校舎からは見えない。
「のぼれるか?」
「ああ」
できないことはないだろうが、男二人が同時にのぼって、このフェンスは耐えられるんだろうな?
「先に行け」
白石にそくされ、頷く。
愚問、か。
鞄を白石に預け、俺は向こう側へと渡りきる。それを見届けて、ようやく、白石はフェンスに手をかけた。
「白石君」
透明感のある女の声。
白石が後ろを振り返る。
木々の影から那須さんが現れた。
「保!」
俺はフェンスを両手で掴んだ。
那須さんは気にとめず、白石を見つめ続ける。
「また、私を置いていくの?」
俺の体が不安でいっぱいになる。二人の共有しているものを、俺は知らない。
最初のコメントを投稿しよう!