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「庸輔、小塚って?」 「ああ。俺達を助けてくれた生徒。お前によろしくって」 「へぇ」  白石が半眼で肉をどっさり取っていく。 「おまっ! 取り過ぎ! 俺の分なくなるだろ!」 「食べたくないみたいだったから」 「食べたいに決まってんだろ! どうして、そうなる!」  ふてくされる白石に、はたと気づく。  こいつ、小塚に嫉妬してんのか?  確かに、今回、白石は助けられる側だったからな。  ここは、無難な話題にかえよう。 「なぁ、明日、親に挨拶に行くだろ。菓子折、なに買ってく?」 「日持ちしそうなものがいいだろうな」  白石の表情筋が和らぐ。  俺、そっちの顔のが好きだわ。 「どっちから行く?」 「ああ。俺のところは融通が利くから、庸輔の家から」  ん?  固まる俺。 「どうした?」 「親に言ったのか?」 「当たり前だ。大切な話だぞ。行く前に、あらかじめ言っておかないとな。向こうにも都合がある」 「お、俺、ちょっと急用!」  スマホを持って寝室へ走り、母さんに電話をする。事情を話すと、ど叱られた。  あいつ、なんで、自分だけ親に連絡入れてんだよ! 教えろよ、バカ!  向き合わなければいけない現実に慌てふためく俺を尻目に、白石は電話で会社に無断欠勤の謝罪をした。  明日へ繋がる今日。  俺達は日常へ帰ってきたんだ。 「で、庸輔の親は明日、いいって?」  ベッドに入り、うとうとしていると、白石が背後から抱きしめてきた。 「ああ。母さん、すげぇ怒ってたけどな」  欠伸が出る。  白石、普通にしゃべってっし。体力あり余りすぎだろ。
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