お姫様の魔法

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「はぁ……」  大好きなパスタランチを前にため息をついた私を、同僚であり親友の美沙がからかった。 「なぁに? 由紀ちゃんはまだマリッジブルーなのぉ?」 「んー……そういうわけじゃないけど……」  フォークでグルグル巻いたパスタはきれいに巻けたと思った瞬間、ツルンとフォークから逃げてしまう。お腹は空いてる気がするけど、最近、食欲も出ない。 「観念しなさいよ~。式もあと一週間ちょっと」 「観念ってやめてよー」 「先月までウキウキだったのに」 「うん……」  八日後の土曜日、私は結婚式を挙げる。  子供の頃憧れた、レースをたっぷりつかったお姫様みたいなウェディングドレスを着て、お色直しは淡いピンクの裾がフワフワしたドレス。最後に胸元にたくさんの青いバラをあしらった、夢のように可愛らしい水色のカクテルドレスを着る。ヘアもメイクもバッチリ。マツエクも式の前日に予約済。デコルテを綺麗にするためのエステは週に二回通ってる。ネイルも明日の退職後にする予定。ふたりの新居はアパートだけど、それは不満に思ってない。彼の親は別に嫌いじゃないけど、新婚のうちくらい二人きりの時間を過ごしたいという希望が叶ったのだから、充分だと思う。できればずっと二人がいいけど……。  私はなにが不満……ううん。心配なんだろう。これってやっぱりマリッジブルーなのかな。 「サトシ君とはうまくいってるんでしょ?」 「あー、うん」 「微妙な返事ね」 「あはは……」
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