第1章

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私は受話器を戻し妻が休んでいる寝室に行く。 「誰からの電話でしたの?」 「美代からで、帰って来られないそうだ」 「雪のせいですか?」 「向こうも大雪で、飛行機が全て欠航になっているらしい。 欠航が何時解除になるかわからんので、来年Uターンラッシュが終わってから帰って来るとの事だ」 「そうですか………………」 「でも丁度良かったじゃないか。 正月は寂しいかも知れんが、美代が帰ってくる頃千代が、孫達や旦那さんを連れて里帰りして来るだろうから。 久しぶりに家族全員が顔を合わせる事が出来るだろう」 「そうですね………………」 千代は高校生の時海外留学に行き、その留学先で生涯の伴侶を見つけて学校を中退し、嫁いで行った。 美代は北海道の大学で勉学に励んでいる。 2人の娘は、私達が50を過ぎてからようやく授かった双子の子供達。 私達はもう70を超えている、20代、30代で子供を授かった親達と違い、子供達と過ごせる月日はそれ程多く残っていない。 それだけに妻が今、寂しく思っている心の内が分かる。 だがその事で、今月半ばに罹患し完治が長引いている風邪が悪化するのも困る。 そう思っている私の頭に、昼間物置で見つけた物が浮かんだ。 夏に千代が家族を連れて帰省すると思い買っておいた花火を、である。 「そうそう、さっき物置で花火を見つけたのだ。 冬の花火も乙な物。 花火をやろうじゃないか」 「雪が降り積もっている今ですか?」 「それも面白いだろう」
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