7人が本棚に入れています
本棚に追加
/39ページ
「最近行ってないなー。今度みんなで行こうね」
「みんなさっきから、すっごくたのしい音! きょうはそういう日なの?」
「いやぁ。いつも通りなんだけどな……」
「そのまま、そのまま。その音でやってみようよ!」
少女は眩しい笑顔のまま、僕たちを促した。
◆
その日の演奏は随分と雑だった。
曲と言うにはほど遠い、不思議な音の大洪水。
無責任に生み落とされた音符が、付近に溢れ返る。
ひとつも解決しないそれらを前に、僕らは溺れそうになる。
息苦しさに耐えかねていると、女の子の声が響いた。
「もっとそろえて、もっともっと!」
揃えるって何をだろう……?
僕たちは顔を見合わせて、みんな同じようにポカンとしていて、それが不思議なくらいに可笑しくて。
僕が笑う。
コウイチも笑う。
ミカも笑う。
それがとても嬉しくて、有り難くて、ちょっとだけ泣きそうになる。
みんなの目を見ていると、自然とリズムが揃うようになり、演奏の輪郭が見え始めた。
「そのちょうし、そのちょうし。でも、もっといけるよ!」
僕も同じ意見だ。
でも……より豊かに表現したいのに、指が追い付かない。
自分の体があまりにも邪魔だった。
胸を切り裂いて、魂ごと表現できればどんなに嬉しいだろう。
直立の姿勢ではダメだ。
最初のコメントを投稿しよう!