陽炎に消える

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予定にない来訪は、なにかしらのトラブルを予感させる。そうするとどうしても過ってしまうのは、彼の記憶の事。 まさか思い出した? 期待と不安が入り混じったような、自分でも説明し難い感情が渦巻く。 けれど諌山君の話は、そういった類では無かった。 「仕事が忙しくて彼女に任せっきりで……。深水には色々とお世話になったみたいだから、式前にちゃんとお礼を言っておきたくて」 それだけ……? なんだか肩透かしを食らった気分だ。 私は慌てて笑顔を作り、当然ですと返答した。 思った以上に脱力してる自分に驚く。挙式まで1か月を切ったというのに、なにを馬鹿な期待をしてるんだろう。 気持ちを切り替えて諌山君に向き合った。 「なにか困った事とか、気になる事はある?」 私が尋ねると諌山君は苦笑いして首を横に振った。
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