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第17章 未来へ
晴翔が反対しても雅人は英雄に協力して貰って着々と結婚の準備を進めた。彼女のつわりが少し治り、まだお腹が目立たない内にカフェグレースで小さな結婚式を挙げることにした。薔薇の花が咲く、庭が最も美しい季節だ。メニューや装飾、そして衣装の準備をするのは楽しかった。由美子の笑顔にときめくことはなくても、由美子の瞳の中で自分が輝いているのを見るのは悪い気はしなかったし、このまま本当に普通に幸せな家族になれるのではないかと思えた。そして式の前夜、何度も求め合い満足するまで抱き合った後、雅人は晴翔に招待状を差し出した。
「俺、明日結婚する。諒子さんも来てくれるって。出来れば晴翔にも祝福して欲しい」
諒子は数日前に日本に帰ってきていたし、式の準備を進めていることに全く気づいていないわけではなかったが、翌日の日付が書かれた招待状を見て、晴翔は呆然とした。そして黙ったまま招待状を握りつぶして鏡に投げつけると、晴翔はそのまま出て行ってしまった。
翌日は晴れて青空が広がり、満開に咲いた薔薇が祝福してくれたが、式の時間になっても晴翔は現れなかった。
「まあ、綺麗・・・」
花嫁と花婿が入場すると、多くの客は花嫁ではなく、白いタキシードに身を包んだ雅人に目を奪われた。胸には諒子が庭で一番綺麗に咲いていた薔薇の花で作ったブートニアが飾られている。
「北山崎くん、おめでとう!」
友人の岡田が感極まって叫びながら拍手すると、呆然と見惚れていた他の客も一斉に拍手して2人を出迎えた。
「やっぱり雅人さんは綺麗ね・・・」
諒子の言葉にトゲを感じながら、英雄は尋ねた。
「晴翔とは連絡が取れたか?」
「うん・・・授業中だからもう連絡するなってメッセージ来たわ」
「そうか。大学にいるのか。なら良かった」
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