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皆と同じ行動を何か一つでもするたびに、陰でくすくす笑われたあのころ。涙は枯れるものなのだと、知った。
そして、何もかもを無視されるようになった今。感情というものを、忘れてしまった。
「もう、疲れた」
いつの間にか、近くにある鋭利な物を見つめるのがくせになった。いつでも自分は、この世界からいなくなれるのだと、だから今でなくてもいいのだと、自分に言い聞かせては日々を生きてきた。
それでもいつか、終わりはくる。
「遅かれ早かれ、人は死ぬの。だから、いつ死んだっていいわよね」
あれほど毎日刃物を見つめ続けたのに、いざそのときになれば、あたしは名前も知らない橋の上に立っている。この橋は、普段滅多に人は通らない。人どころか車すら通らないから、あたしを止める人は誰もいない。
「バイバイ、世界」
大して面白くなんて無かったわ。
胸にそう言葉を残して、白い欄干に足をかけた。そのとき――。
「ここで死ぬのはやめてくれん?」
振り返れば、ボロボロの服を着た、あたしと同じくらいの歳の男の子が立っていた。
「なに? 止めないでよ。散々死ねって言われてきたんだから、お望みどおり死んでやるの」
言いながら、もう一度欄干に足をかける。すると彼は、困ったように頭をかきながら、
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