道の真ん中の木

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道の真ん中の木

 田舎の一本道。真ん中には大きな木。  道幅が広いので、車も気を避ける形ですれ違うことはたやすい。だから誰も木の存在に不満はなかった。  でもある時、その道をアスファルト舗装しようという話が出て、その際木は切り倒そうということになった。  反対意見も出たが少数派だったので取り上げられず、木は伐採され、道路はアスファルト仕立てになった。  でも走りやすい環境になった筈なのに、道路が新しくなってからあの道では事故が多発するようになった。  視界を枝にふさがれた、と言う人がいれば、たくさんの落ち葉でスリップした、と言う人もいた。  事故の原因のほとんどが、今はもう存在しない木にまつわるもので、今になって、誰もが頻発する事故はあの木の祟りだと言っている。  今更ながら、アスファルトの一部を削って、新しく木を植え直そうという話も出ているらしいが、それは切られた木とは別ものなので、はたして事故原因が取り払われるかどうか怪しいところだ。  どうして道のど真ん中に大木が立っていたのか。理由は判らないけれど、あからさまに不自然なものがそれでも残されている場合、いわくつきである可能性はとても高いので、あの木も、切るにしても、もっときちんと由来やら何やらを調べてからにするべきだったのではないだろうか。  まあ全部今更な話だけどね。 道の真ん中の木…完
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