3825人が本棚に入れています
本棚に追加
/159ページ
この部屋に来るのが初めてならわかるが、そうじゃない。
「今日からずっと、加賀さんと一緒に暮らすんだって思ったら、すごいドキドキして、その、暴走しそうで」
「暴走」
反復する俺を、倉知がゴクリと唾を飲み込んで見下ろした。
「加賀さん」
倉知が真面目な顔で、俺を見据える。綺麗にお辞儀をすると、少し気取ったような表情で言った。
「ふつつかものですが、これからよろしくお願いします」
「おう、こちらこそ。よろしくね」
頭を撫でてやると、肩の力を抜いたのがわかった。照れくさそうに頭を掻きながら目を泳がせて訊いてくる。
「こんな時間だし、明日平日だし、もう寝ます? よね?」
何かを期待したような訊き方に、つい笑ってしまった。
「したい?」
首を掻きながら訊いた。倉知が顔を赤らめて俺から目を背ける。初めてでもないし、泊まった回数も数知れず。でも、なんとなく気持ちはわかる。
「なんか初夜みたいな感じするもんな」
「しょ、初夜」
初夜、というフレーズに食いついた倉知が急いでこっちを見た。
「加賀さん」
「うん」
「その格好、誘ってますか?」
最初のコメントを投稿しよう!