5.

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ソファーも玄関マットも、自分が生まれた頃からあるもので、両親が亡くなった時に横たわっていたものだ。躊躇いがなかったとは言わない。 それでも新しい門出に、両親も納得してくれるだろうと思えた。 裕子はそっと手を合わせる。 「お父さん……お母さん……」 小さな声で呼んだ。 後悔はある、自分がこの二人を両親として選ばなければ、二人はまだ長く生きたかもしれない。しかし自分が選んだばかりに運命を変えてしまったかもしれない──。 朋弘がそっと肩を抱き締め、裕子の心を読んだように言った。 「その分、俺達が生きよう。お前は幸せになる義務がある」 小さいが力強い声に励まされた、裕子は頷く様に「うん」と答える。 朋弘は東京のアパートを引き払った、裕子が生まれ育った家を守る為にこの家に一緒に住むことにしたのだ。相続税が全く馬鹿にならない金額だったが、その為に貯蓄はなんとかしていたし、法律に明るい良も相談に乗ってなんとか家を手元に残す事はできた。その分一文無しと言っていい。 間もなく真歩もこの家に一緒に住み始める、新しい生活の幕開けだった。
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