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金の葡萄
私の胸元に光るソムリエールの証の金の葡萄。それは私の矜持と愛の証だ。
「できちゃった」
「は?」
急にひとの昼休みに訪れて、ニキビができちゃったの、とは流石に亜希でも言わないだろう。私は亜希のあっけらかんと言うその神経がわからなかった。
「亜希、どこからつっこめばいいかわからない」
「どこも論理は破綻してないけどな」
子どもが欲しいと思ったから作ったの、それって問題? という不思議そうな顔をするので、私はこの子といるときはいつもこうだったと思いだした。唐突に話題を振られる。それもとても大事なことをボールのようにぽんっと放ってくる。
「父親はだれ? っていうかあんたレズじゃなかったの?」
矢継に質問しないでよ、とりあえず落ち着いて、と言われた。私の貴重な昼休みを潰され、なおかつ心は嵐のなかに放り込まれて、私は呆然としている。
「父親はわからないっていうか、正確に言えばどっちだかわからない。ふたりの精子提供者の精液を混ぜたから」
「はあ?」
「あと私はレズだよ。結婚もしないし、事実婚もしない。シングルマザーになるの」
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