突然の……

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「ト、トイレに、行きたいんや、けど……」 「あぁっ?? 構わねぇから。そこいらの隅っこで  座りションしろや」   「……大きい方、でもですか?」   「チッ ―― めんどくせぇーなぁ、おい、てめぇ  行ってこいや」   「ええっ、おらぁ、やだよぉ」 「じゃ、次郎、お前が行け」 「俺だって嫌っすよぉ。ここの便所 ”出る”って  噂あるの知ってるでしょ」       どうやら、私の監視でトイレについて行く役を   皆んなで押し付けあっているよう。         と、さっき私のロープを解いてくれた男が   名乗りでた。       「あ、兄貴、よかったら俺、行って来ましょうか?」   『あぁ、それがいい それがいい』と、3人の男が   同調し、一同のリーダー格らしい男が、   ゴーサインを出した。       「んじゃぁ、頼むわ。小娘だと思って、ぬかるんじゃ  ねぇぞ」   「はい、わかりました」   男と一緒にトイレへ向かう道すがら、   その男が襟元に口を寄せ、小声で   喋りかける ――。       『朋ちゃんで~す。ターゲット無事確保しましたぁ。  連中のお仕置き宜しくっす』   「!! あ、あの ―― あなたは……」 「僕は西島と同じグループのもんです」 「じゃ、西島さんは ――」 「奴なら大丈夫。頭かち割られようが、ダンプに  跳ね飛ばされようが、そう簡単に死にゃあ  しません」   「そう、ですか……よかった」          「あ、僕、鬼束朋也って言います」 「私は和泉絢音です」      その後、私はその朋也さんと一緒にトイレへ行き、   そこの小窓から朋也さんのお仲間に救出された。      その時、倉庫の中では随分と派手な音と男達の   悲鳴に呻き声が聞こえて来ていたけど、   それは朋也さんの言っていた”お仕置き”の為   なんだろうと思い、余計な詮索は止めにして   おいた。  
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