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おもいっきり後ろからタックルされた。全く受け身の体勢を取っていなかったので吹き飛ぶように前にこけ、俺を急襲した相手の顔は未確認。それでも、十分なヒントがあった。声とその呼び名。相島宗也(あいじまそうや)を「そう君(くん)」と呼び、鈴のようなソプラノ声をもつ人物は俺の脳内辞典には1人しかいない。
「りん!おっまえなあ、いきなりタックルするなよ!お前軽いから人に突撃してもいい、とかおもってるだろっ!心の準備なかったら普通にふっとぶんだからな!」
「ご、ごめん。そんなにそう君(くん)がおもいっきり吹っ飛ぶとは思わなかったんだ。」
俺の前で「りん」はしゅんとする。自分の家の犬が怒られたときみたいだ、と思う。耳がついていたら絶対それは伏せているに違いない。それを想像したら笑えてきた。
「あー!ひどい!わたしまじめにあやまってるのにぃ!」
今度はおもいっきり頬を膨らませてくる。こどもみたいだ。まあ、なんというか本人は怒っていて必死なんだろうけどこっちからするとなにこの可愛い生き物は、そんな感じだ。こんなやりとりを道の真ん中でしていたら、気づくとそこを通る観光客がみな暖かい目をして通り過ぎていた。若いっていいわねぇという声が今聞こえた気がしなくもない。前の女の子、つまり俺の幼馴染、池田凜(いけだりん)もそれに気が付いたのか顔が茹蛸のように真っ赤になっている。やかんを乗っけたらお茶が沸きそうだ。とはいえ、人のことは言えず、おそらく俺も負けず劣らず真っ赤な顔をしているだろう。
「は、はやく行くよっ!」
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