『ある朝、目が覚めたら「夫婦」が「婦夫」になってました』

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「おい、真由美ってば。朝だぞ? ……何だよ、まだ怒っているのか? 昨日は俺が悪かったよ。ゴメン。謝るからさ。機嫌直してくれよ。なっ? 頼むからさ」  だが、今では毎朝の日課になっている俺の必死の謝罪も虚しく、ダブルサイズのベッドに盛り上がる布団からはグーグーと大きなイビキが聞こえてくるばかり。 「オイオイ! 俺の朝飯……はともかく、子供のご飯はどうするんだよ?」  三年前、喧嘩ばかりしている俺達夫婦の間にやっと生まれた可愛い天使は、ダブルベッドの真ん中に無邪気な寝顔でスヤスヤと眠っている。 「だから俺が悪かったって言ってるだろ? 謝るからさ。昨日はゴメン……ゴホッ ゴホン。あれ? さっきから声の調子がおかしいな。畜生、こんな日に限って風邪でも引いたかな」  喉に違和感を覚えながらも妻の機嫌を取るのに必死な俺は、布団にもぐりこんだまま起きてこない妻に両手を合わせて懇願する。 「な? ホラ俺、仕事だから。今日は会社で重要なプレゼンをやらなきゃならないんだ。だから頼むよー。このとおり! ほら、起きてくれよ。布団めくるぞ? そーれっと」  照れ隠しの掛け声を呟きながら布団をがばっと一気にめくり上げると……。  なんとそこには!  いつも俺が愛用しているパジャマをだらしなく着込み、高イビキをかきながら爆睡している「俺自身」の姿を見付けたのだ。     
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