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鳩が、ビニールハウスの中を飛び回る。
『彼女』はそれを虚ろな目で眺めていた。
辺りには色とりどりの花が咲いている。青、赤、紫。まとまった色の群生の下には、苗床となった人が生きるでもなく死ぬでもなく横たわっている。
収穫を終え、腹を膨らませた鳩がビニールハウスを出ていく。
新しい主人を探しに行ったのだろう。道化師を辞めた僕にはもう、鳩は止まらない。
「種を、」
彼女がつけたなら、僕もそれを飲もうか。
つるに犯されながらも僕を産んでくれた彼女には申し訳ないけれど、薄桃色の花が咲くことを僕は。
――望んで、いる。
END
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