贅肉の繭に包まれて。

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贅肉の繭に包まれて。

 昼休み。すうっと、少し強めに風が立ち、わたしのランドセルに括り付けられた、風車がくるくる回る。窓から見下ろす、埋立地のグラウンドに砂埃が舞い、それが日に照らされ、キラキラと光っていた。  わたしの視界の隅には、ひらひらと教室の中を自在に舞う、綺麗な揚羽蝶。視線でそれを追って、捕まえようと掌を開き、右腕を精一杯を伸ばすも、その蝶は蜃気楼みたく消えてしまった。 【贅肉の繭にくるまれて】  祈るような午後。わたしを置いて消えてしまった蝶から意識を現実に戻し、いそいそと体操服に着替える。  炎天下のグラウンドにのっそりと出たわたしたち数名は、指示に従い機械的に並ばされた。そして鞭を連想させる無機質で丈夫そうな縄跳びを配られる。  小学生生活も折り返しを迎えたわたしは、芋虫クラブと呼ばれる校内の太った子が運動をする為の、特殊なクラブに半ば強制的に入れられていた。わたしの母親はとても料理が上手で、毎日沢山ご飯を食べたのがいけなかった。  だんだんとクラスメイトからもデブとして扱われるようになり、わたしの幼い自尊心は、心ない大人たちに傷つけられた。
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