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避難訓練
剛志は欠伸を噛み殺すと、ぼんやりと空を眺めた。すっきりとした秋晴れの青の中を幾数もの黒がスウと奔っていく。――雁の群れだろうか。
剛志は遠くへと去っていく黒を目で追い、視線だけで追いかけるには限界のところまでくると再び欠伸を噛み殺した。未だ校長の説教は終わる気配を見せない。一体あと何分したら、防災頭巾を脱ぐことができるのだろうか。
「タイムも移動中の動きも完ぺきだったのに怒られる意味が分かんねえんだけど」
教室に戻り、乱暴に椅子に腰かけながら剛志が愚痴ると、クラスメイトが苦笑した。
「ああ、前回はお前のせいで説教タイムが倍だった上にやり直ししたっけな」
「だから余計におかしくねえ!? 今回は完ぺきだったろ!」
そう、今回は完ぺきだった。何もかも、非の打ちどころがなかった。それにも関わらず、校長は賛辞もそこそこに思い上がるなだの何だのと怒号を飛ばし始めたのだ。
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