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 腕の中で微睡んでいると、夜の闇が薄らいでいくのが見えた。  見上げた夜空は藤色に染まり、白け始めていた。  夜が、明けていく。  逞しい腕は、僅かに動く気配を察したのか、再び締め付けるようにレイレスを捕らえた。  見動くことも出きぬ腕の中で、レイレスは温かな肌を感じていた。 「エィウルス」  目を瞑り名を呼ぶ。  「俺の名は、レイズクライムレスという」  腕が、緩まれ、レイレスは下草に肘をつき起き上がる。  傍に落ちていた羽織りを、肩へと上げると、背後で起き上がる気配がした。 「この姿で、俺の時間は止まった。子供のようななりだが、この大陸を支配している。お前たちが吸血と呼ぶ、王族の、…王だ」    朝日が、エィウルスとの合間に差し込む。  眩い光に、己の瞳が何色を示しているのかよりも、レイレスは続けた。 「お前は、いずれ、俺の国を滅びへと導く。だが、俺は、そんなことを許さない」  白銀の双眸は、瞠ることもなく、レイレスを見ていた。   「…ここから先は、俺は王として国へと還る。お前は、獣として俺を探せばいい」  レイレスは、羽織りの胸を開く。  鮮やかな刺青を辿ると、宙を漂うようにして、その首筋へと。 「最後に残った俺を、玉座から引き摺り下ろすのは、お前だ、エィウルス」  その首を引き寄せ、口付ける。 「お前が、たとえ亡霊を追うだけの獣だとしても」    エィウルスの腕が、レイレスの腰を引き寄せる。  首筋に宛てがわれていた唇を、重ねる。  熱い吐息を奪い合うように口吻た。  離れる事を許さないかのように、唇を奪い合う。  言葉を発すれば、それが合図のようだった。    「…ふっ…」  先に発したのは、レイレスだった。 「…俺を…、………」  レイレスは、囁いていた。  だが、その言葉の意を、エィウルスは解せなかった。
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