完璧男子に類なし again

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ゆっくりと目を開く。 見たことのない、部屋。 「痛ぇ・・・」 少し頭が痛い。 軽い二日酔いだろうな。 とりあえず、水でも飲むか。 「うわっ」 上体を起こそうとしたが、重くて起こせなかった。 ハッとして自分の胸を見る。 瀬戸が、しがみついていた。 絶対に離れないように、背中に手を回して、 抱きつきながら・・・眠っていた。 よく見ると、足も俺の脚に絡ませている。 そうだ、俺は 昨日、瀬戸と・・・ 「・・・・・・」 感じたのは、嬉しさよりも、愛しさよりも・・・後悔。 酔っていたとはいえ、 どうして瀬戸に触れてしまったんだ。 俺には沙綾がいる。 数日後にはあいつと同棲をはじめ、ゆくゆくは結婚もする。 しなくてはいけない。 それなのに、瀬戸に触れたら・・・ 手放せなくなるだろ。 「ん・・・っ」 胸に吐息が触れる。 今の衝撃で、瀬戸が目を覚ましたようだ。 顔を上げて、俺を見て、少し驚く。 「・・・・・・あ」 「・・・うす」 「う・・・うん」 お互いに、目線をそらす。 どうしていいか、わからなかった。 昨日、お互いの気持ちを確かめ合った。 激しく気持ちをぶつけ合い、求め合った。 でもそれは、昨日の話だ。 「・・・・・・た、橘・・・その」 「悪い、瀬戸。シャワー借りていいか?」 「あ、うん」 「・・・じゃあ、離して」 「え・・・あ、ごめん」 瀬戸は慌てて俺の身体から離れる。 無意識に、抱きついていたのか。 まあ、いい。 立ち上がって、浴室へと向かう。 「た、橘!」 「ん?」 「き、昨日は・・・その」 瀬戸がしどろもどろになりながら言う。 「す、すごく酔ってたし、ああいうことするの、ひ、久々だったから・・・」 「だから、何?」 「えっ・・・と、き、気にしないで欲しい、っていうか・・・」 「・・・・・・はぁ」 なるほど。 一夜の過ちだった、ってことにしたいわけか。 「俺も、酔ってた。あんなに酔ったのは久々だ」 「う、うん・・・すごかったね」 「久々にクラスメイトに会って、テンションが上がっていたのかもしれないな」 「そ、そうなんだ」 「お互い勢いでしちまった、ってことで・・・いいよな」 瀬戸は小さく頷く。 それを確認し、俺は瀬戸に背を向ける。
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