愛して、先生

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愛して、先生

あの瞬間から、俺は凍りついた。 喜怒哀楽など一切封じ、 ただの人形になってしまった。 だが、人形も案外楽だ。 「堀江先生、おはようございます」 「おはよう」 俺が校門に立っていようとも、 生徒たちは挨拶しかしない。 もし、人形でないのなら・・・ 「ナオちゃん、おはよう!」 「おう、おはよう!ってか、ナオちゃんってなんだよ、藤原先生だろ?」 「わかったよ、ナナちゃん」 「いや、絶対わかってねーし」 反対側に立っている藤原先生のように、 生徒のつまらない会話に話を合わせなければならない。 教師が生徒に優しくする理由などない。 ただ、勉強を教えさえすればよい。 「さて、あいつで最後ですかね?」 「そうですね」 「じゃあ、職員室戻りましょうか、堀江先生」 「はい」 藤原先生は屈託のない笑顔で話しかけてくる。 苦手なタイプだ。 「あーお前、なにコソコソ通ろうとしてんだよ!」 「うわ、やべ!見逃して、ナオちゃん」 「ナオちゃん?」 「ふ、藤原先生・・・」 「しょうがないな、じゃあダッシュで教室行けよ」 「ありがとう!ナオちゃん」 明るくて話しやすい教師。 人望もある教師。 だがそれは、彼がまだ新米だからだ。 教師という仕事の闇を見ていないからだ。     
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