第1話 転性の手引き

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第1話 転性の手引き

 ある日のこと、少年は国王直々の依頼と伝えられ宮殿を訪れていた。 少年は紺青色の髪に紫の瞳、悪戯っぽさが残る童顔が幼さを醸し出している。 その少年、ジンティス=エスタルカは依頼内容を説明されたが耳を疑った。 「申し訳ありません国王陛下、内容の意味をよく理解できません」 「うむ、ならばもう一度説明しよう」 彼の指摘を受け、国王陛下ジール=レオコニスは依頼内容を再度説明した。 「現在二ホンと呼ばれる異世界では詳細不明の魔力反応が多発している。しかし二ホンでは魔力といった概念が存在しないはずだ。そこで膨大な魔力が探知されるのは不自然な現象である」 「はい、その件に関しましては我が部隊の情報員から報告を受けています」 そう、魔術や魔法の存在しない世界で魔力が発生することは通常あり得ないことだ。考えられるとすれば、魔力を有する者が外部的に影響を与えているということ。そこで発生原因と犯人の特定及び捕獲をすることが依頼内容であるとジンティスも薄々感づいていた。しかし予想できなかったことが少々。 「そこで女子校生として二ホンに潜入し、事件解決へと努めよ!」 「そこです国王陛下!」 国王に間髪入れずストップをかけるジンティス。 「潜入するのは分かります。私の年齢からして学生として振舞った方が怪しまれずに済むことも理解できています。」 「うむ、ならば何の問題も_」 「何故女子でなければならないのでしょうか!?別に性別はそのままでも支障はないと思うのですが!」 そう、これが予想できなかったことだ。というより予想できる者なんているはずがない。国王は性別を変えろと言っている。確かに魔法で女子に変身することも可能ではある。しかし何かと負担は大きい。魔力消費やら生活上での振る舞いやら・・。それに自分が女になるという状態が気持ち悪く、あまり想像したくないのが本音だ。できれば男子のままでいたいのが強い願望である。 「もう既に手配は済んでいる。お前は明日より陣地瑠香という偽名を使い私立大三月高校の女子生徒として現地解決に勤しんでくれ」 国王の手元には入学案内と書かれたパンフレットと女子用の制服が置かれていた。 「もう手遅れだった!!仕事早すぎませんか国王陛下!?」 こうしてジンティスの二ホン潜入の日々が始まったのである。
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