尾行

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尾行

 昔から推理小説やドラマに出てくる『探偵』が好きで、俺も探偵というものになりたいと思っていた。  色々と勉強し、今は念願叶って探偵社に勤めている。といっても、仕事内容は浮気調査や人探しなどがほとんどだが、総ては探偵としての経験を積む修行だと思えば、単調な業務も苦にはならない。  今日も今日とて、身辺調査のため、一人の男を尾行することになった。  俺もそれなり尾行経験が増えたため、かなりうまく相手の足取りを追えている。だが、ターゲットの行動はかなり不規則で、気を抜いたら尾行していることがバレそうだ。  そうまで集中していたせいか、気づけば見たこともない場所に来ていた。  尾行を開始した駅近辺の土地は知り尽くしているから、見覚えのない場所なんてある筈もないのだが…まあいい。ちょっとくらい迷ったところで、スマホでいくらでも現在地は調べられるから、職場でも家でも戻ることはたやすい。  そんな系なことを考えている間にも、ターゲットが場所移動を始める。見逃す訳にはいかないから、きちんと後をつれないとな。 * * * 「…やっぱ帰って来ねぇか」 「連絡が取れなくなってからもう五日ですからね」 「GPSも役に立たないしな」 「これで五人目ですよ」 「今回も『また』になっちまったな」 「定期的にくる、料金前払い且つ不成功で払い戻しナシの身辺調査依頼。オイシイ依頼ですけど、次は断りましょう」 「ああ。尾行させた若いのが全員行方不明になっちまうんじゃ、こっちも商売あがったりになっちまうからな。次からは断る」 「それにしても…みんなどこに行っちゃたんでしょうね」 尾行…完
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