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「ことちゃん、亜泉の部活が終わるの、待ってるんだろ? 悪いからいいって」
「これ以上俺に心配させんな。行くぞ」
亜泉が待っているので、ばたばたと園芸用道具を片付ける。彼と連れ立って校庭に行くと、部活動をしている生徒の気配に、平和を感じて、智秋はほっと胸をなでおろした。
校庭を見下ろせる外階段に座っていた女子生徒が、二人の姿を見て立ち上がった。
それが琴葉で、ショートカットの似合う、勝ち気な雰囲気の美人だ。
亜泉が北園たちの所業を琴葉にかいつまんで話すと、彼女は自分に起きた災難のように憤慨した。
「あいつら……ちーちゃんにそんな酷いことして、許せない!」
「ことちゃん、俺さ、こんなひ弱だけど一応男だし、ちょっとからかわれたくらい、全然平気だよ?」
「そういう問題じゃないって。あいつら、アルファで金持ちだからって調子に乗ってんだ。ベータでもあいつらのえじきになった女子、たくさんいるんだから!」
「琴葉。おまえはこいつを家に送り届けるだけでいいからな。無理するなよ」
「ちーちゃんのことはあたしに任せて、かっちゃんはもう戻りなって」
「ん、わり。じゃあ、二人共気をつけて!」
亜泉が駆け足でグラウンドに戻っていく。
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