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沢山の人達が街と街の外を隔てる境目で、目の前に広がる焼け野原を呆然と眺めていた。
焼け野原のあちらこちらでは、まだ燃える建造物が残っており黒煙を吹き上げている。
遠くの方では黒い雲が湧き上がり真っ黒な雨を地上に降らし、黒い灰が雪のように舞っていた。
焼け野原になっている場所にはさっきまで、背後にある街と同じような街並みが広がっていたのに。
「香奈恵ーーーー!!」
呆然と焼け野原を眺めていた人達の中の1人の若い男が、大声で女性の名前を叫びながら焼け野原の一方を目指して走り出す。
「お母さーーん!」
「俊夫! 美加子!」
「あなたーー!」
「珠江ーーーー!」
「パパーー!!」
走り出した若い男の悲痛な叫び声で我に返った街の人達が、同じように愛する人の名を叫び、焼け野原の先に向けて走り出した。
携帯やスマホに政府からの避難指示のメールが着信すると同時に、聞き慣れない空襲警報のサイレンが街の中に鳴り響いた直後。
西の方角から飛来した核ミサイルが次々と周りの街に着弾して、焼け野原に変えていく様を街の人達は目の当たりにした。
彼らは気が付いていないが、彼らも飛来した核ミサイルによって死んでいる。
空襲警報や避難指示が出される前に着弾した最初の核ミサイルによって一瞬に蒸発した彼らは、自分が死んだ事に気が付かず、人類が滅亡する過程の目撃者となっていたのだった。
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