隙間

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仲間の一人が、百合の悪い噂を聞いたと話してくれた。百合と付き合った男が、別れた後自殺していたと。百合の心変わりで振られた事が原因だったらしい。 その後付き合った男も、精神的に病んだり行方が解らなくなったりしているとか。あれだけの良い女であれば、その位の噂話は付き物だろうと思った。 心配してくれていた仲間からの忠告を無視し、俺は百合との付き合いを続けた。 その事を後悔するまで時間はかからなかった。 百合がうちに泊まる様になって、すぐに違和感を感じるようになった。二人で部屋で過ごしていると、ふと視線を感じるのだ。 最初は気のせいだと思っていた。 部屋には間違い無く俺と百合しか居なかったし、外を見て覗かれて居ない事は何度も確認した。百合は全く気にならない様で、考えすぎなんじゃないかと言われた。 それが毎回の様に続くと、気のせいだとか考えすぎでは片付けられない。だんだんと視線に対して神経が過敏になっていった。 そして俺はとうとう気付いてしまったんだ。 その日も百合が来ていた。百合の前では極力平静を装いつつも、視線が気になって仕方なかった。 そろそろ寝ようかと、ベッドに入り明かりを暗くした。 何故か無性にクローゼットが気になった。閉まりきっておらず、少し空いた状態になっていた。 その隙間から、目が見えた。 見開いて血走った目が。 慌てて飛び起きて、クローゼットを開いた。どこにも逃げ場なんてある訳が無いのに、そこには誰も居なかった。
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