〇〇つき物件

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〇〇つき物件

 会社の飲み会終了後、うっかり終電を逃してしまい、少し値は張るがタクシーを拾うべきか、あるいはネカフェに転がり込むべきか。その二択で迷っていたところへ救いの声がかけられた。 「ウチ、近くだから。泊まってくか?」  一も二もなく頷いて先輩の部屋に転がり込んだ。  正直、今月は懐具合が淋しい。だからタクシー代もネカフェの利用料も要らない状態はありがたい。  そう思っていたけど、部屋に通されるとすぐに不満が込み上げた。  上階がやたらとうるさい。もう日付も変わってるっていうのに、子供の走り回る音がムカつくレベルで響いてる。 「上の奴、非常識っスね。こんな時間にガキはしゃがせて。あー、文句言いに行きてー」  酒で気が大きくなってたせいか、俺は荒々しくそう吐き捨てた。けれど先輩は穏やかに笑って、 「それは無理だ」  と一言告げた。 「何でですか! こうまで騒いでるんスよ?! 文句くらい、言っても悪くない…いいや、むしろ言って当然でしょう」 「俺もそう思うけど無理なんだ。…ウチ、最上階だからな」  翌朝、ベランダからオレを見送ったくれた先輩の部屋は、確かに三階建ての最上階にあった。  後々聞いた話じゃ、先輩の借りてる部屋、家賃がやたらと安いらしい。  本人はのほほんと、 「バス・トイレつき、一部の家具つき、さらにいわくつきの格安物件」  なんて言ってるけど、俺はあの日以来ずっと、先輩に、早く引っ越した方がいいと勧めている。 〇〇つき物件
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