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いつの間にか隣から生活音が聞こえて来た。
入居の挨拶も無く、すれ違う事も無かった為、顔すら解らなかったので無干渉であれば良いかとそのまま気になどしてはいなかった。
ある日、普段早く寝てしまう為に気がつかなかったが、夜な夜な隣の部屋から何かが聞こえて来ていた。
余りに五月蠅く気味が悪かったため、耳を澄ますとそれはお経であった。
「何だよコイツ。こんな奴だって大家からも聞いてねぇぞ、最悪だな気味悪ぃ」
そう言いながらも、耳を塞いでその日の夜は寝る事にした。
その日だけかと思ったが、どうやら毎晩それは行われていたらしい。
流石に毎晩である事と、気になりだすと眠れなくなってしまった為、等々注意する事にした。
「あの、隣りの者なんですけど。毎晩五月蠅いんですけどあれ止めて貰えますか?」
しかし、何度ノックしても出てくる様子が無かった。三日ほど扉の外から文句を言っていたその時だった。
「いい加減にしてくれよ!毎晩毎晩ウルセェンだよ!出て来いよ!」
「あの?あそこの部屋の方ですか?私コッチなんですが何か?」
どうやら自分の隣のもう一つ向こうの住人らしい。流石に訪問も度が過ぎたかと思い一応事情を話したのだが、見る見るうちに顔色が変わっていった。
「あの非常に言いにくいんですが、此処には誰も住んで居ませんよ。それに私の方からはそんな物音ひとつしませんし」
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