急ぐサラリーマン 高嶺 敬ニの場合

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30代半ばのその男は何時も急いでいた。そして、いつも疲れていた。 それでも男は急ぐことを止めなかった。急ぐ事で自分の存在を認めていたからだ。 この日も男は朝からアポを精力的にこなしていた。社にこれから戻るという連絡を入れ、ふと腕時計を見る。 昼をとっくに過ぎていると言うのに朝から何も食べていないことに漸く気づいた。 取り合えず、男は目についた喫茶店の扉を押し開けた。 「いらっしゃいませ」 男は声の主の顔を見ることもなく、 「ホットと何か軽食を…早く出来るものを、あればカレーライスにしてくれ」 (せわ)しくそう言うと入り口近くのテーブル席に座った。
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