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それに、姉はそこにいなかったから気持ちが自分でもわからなかった。だけど、今は涙が止まらない。
やっぱり、死んで欲しくなかった。血は繋がっていなくても、志津代はずっと貴之の美しく優しい自慢の姉なのだから。
「姉さん……」
貴之はただひたすら何もない墓を見つめ、涙を流した。
後日、浦澤氏は引っ越した。
姉と過ごしたあの家はそのままにしてあるから、いつでも利用してくれたらいいと貴之に告げた翌日に去って行った。
郵送で送られてきた鍵で、その意図に気付いた。義兄はもうここには帰ってくるつもりはないことに。
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