9人が本棚に入れています
本棚に追加
/38ページ
【第三章:風の狩場とカルマの谷 五】
※ ※ ※
虹の子供たち、良くお聞き。
この世界は、もともと一つのものだった。
光も闇も色も無く、ただ一つのものだった。
世界は最初から全てを持っていて、それだけに何も無いのと同じだった。
考えてもみなさい、世界のあらゆる物を持っていれば、
他に欲しいものなど何も無い。
そこに自分一人しかいなければ、誰かにそれを与えることも無く、
誰かから何かを受け取ることもない。
全てが満たされたこの世界の感情は、ただ愛だった。
だがそれを表す術を持たなかった。
愛しか感じた事が無く、愛以外を感じさせるものが他になかったからだ。
それはまったく、何も感じていないのとよく似ていた。
全てであり無。愛であり無情。
それがこの世界のはじめの姿だった。
ある時世界は、意思を持った。
自分自身を感じたいと。
その時、世界は分かたれた。
最初はそう、光と闇に。そして天と地に。
それから我々、色と影を持つもの、
天と地の間に生きるものが創られた。
だからこそ、我らは虹のごとく様々な色と心を持ち、
自分とは姿形の違うものをも愛することができるのだ。
虹の子供たち、良くお聞き。
天と地を繋ぐ光の環、虹は誰も踏みにじることはできない。
だが我らが天からの光を受け、生きるこの大地の足元には影が、
その足の下には大地と闇が、いつもそこにあることを忘れずに。
全てのものを受け入れ愛することができる者だけが、
虹の橋を渡り、この世界を一つに繋ぐことができるのだよ。
どうか忘れないでおくれ。
我々はもともと、ただ一つのものだった。
分かたれたのは、お互いと、自分自身のすばらしさを知るため。
愛が何かを感じるため。
どうか思い出しておくれ。
我々は、この世界そのものだということを。
思い出すまで永遠に、輪廻の環の中繰り返し、
違う姿で生まれ変わる。
虹の子供たち、良くお聞き。
我らはこうして伝えよう。
未来永劫忘れぬように。
光も闇も同じもの。
全てを一つの環で包み、同じように愛しなさい。
忘れてしまえば永遠に、我らは分かたれ続けるだろう。
そうしていつか、世界の全ては、無に還る。
思い出すなら一つに還る。個でありながら、全てに還る。
世界の全てが、愛に還る。
※ ※ ※
最初のコメントを投稿しよう!