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「今日も空は青い鳥でいっぱいだねぇ」
ギンコがハンモックの上で寝転んだまま、軽く伸びをして言う。
「え、そうなんですか?」
ハンモックが吊るしてある木の斜め下、木陰の縁台に座っていたスズは、練習していた小さなギターとハープがセットになったような、『アムドゥス』という木製の楽器から目を離し、空を見上げた。
風はやや涼しくなったが、木漏れ日は暖かい。
手で影を作ってしばらく空を凝視してみたが、スズには雲一つない青空しか見ることができなかった。
ハチワレ・ブラック号の屋上はそれなりの大きさの木も植えられた、鳥たちの憩う水と緑の豊かな庭園になっている。
昼食後の休憩時間や自動車として移動中の時など、天気の良い日は皆がここに集まることも多かった。
そして今は昼食後の移動時間だ。
こういう時にはスズは大抵、こちらの世界についての常識や、簡単な手品やジャグリングなどのサーカスの芸、楽器や眠虎の世界の歌などを教わっていた。
「違う違う、それ、お兄ちゃんの口癖なの」
フーカがほんの少し片眉を上げ、イヤホンを外しながら苦笑して言う。
彼女は屋上庭園の真ん中にある噴水の縁に腰かけ音楽を聴いていた。
噴水の飛沫がキラキラと日の光を反射し、フーカの赤い髪飾りを輝かせている。
公演のない日は皆、ギンコ以外は大抵色のついた着物のような普段着を着ており、それもまた彼女に良く似合っていた。今日のは桃色だ。
スズも似たようなデザインの青の着物を着ている。
噴水の中央には水晶のような石で出来た、一抱えもある巨大な睡蓮の花があり、水はその花びらの一つ一つから溢れるように流れていた。
花びらは上部から透明感のある黄色、黄緑、そして水色へと美しい色のグラデーションで彩られている。
その花の中央には摩尼宝珠という、大きな水滴がそのまま固形化したような形の、水のように透き通った水晶が置かれていた。
これは空気中から水分を集め水にする貯水槽であり、浄化して飲料水として使うための水道でもある、『摩尼睡蓮』という物なのだそうだ。
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