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二人は駐車場へ戻ってきて、車に乗り込んだ。
すぐに車が走り出す。
剣上の端整な横顔にはまだ怒りの感情が残っていた。友一はそんな恋人の横顔を見つめる。
友一を救い、友一のためにあんなに怒ってくれたことへの甘やかな気持ちと、いまだ怒っている彼がちょっぴり怖くて、自分のせいでせっかくの花火大会を台無しにしてしまったという罪悪感めいた気持ちがごちゃまぜになっていた。
「先生、ごめんね? せっかくの花火大会だったのに……」
友一がしょんぼりと言うと、ふっと剣上から怒りのオーラが消えた。そして友一のほうへ手を伸ばしてくると、髪をそっと撫でてくれる。
「友のこと、怒ってるんじゃないよ。オレの友に触りやがったあの野郎が許せないんだ」
「お尻をちょっと触られただけだよ」
……まあ、それでも充分気持ち悪かったけど。
「おまえの全てはオレのものだ、友。おまえに触れていいのはオレだけだ」
「先生……」
その思いは友一だって同じだった。
先生に触れていいのはオレだけ。オレが触れられたいのは先生だけだよ……。
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